はじめに 「精神障害者保健福祉手帳」について、詳しくご存じの方は少ないと思います。申請手続きに時 間がかかり面倒というイメージを持っているといった印象があるかもしれません。手帳を取得する ことにはどのようなメリットやデメリットがあるのか、取得するために必要な手続きのやり方を詳し く説明していきます。1.精神障害者保健福祉手帳とは精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。 精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方を対象に、国から様々な 支援策が講じられています。 発行するのは都道府県や政令指定都市・中核市などの自治体で、税制の優遇措置や公共料金 の割引等、福祉サービスを受ける際に手帳自体が「証明書」扱いとなります。 参照:厚生労働省「障害者手帳」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html2.精神障害者保健福祉手帳を取得できる対象は?精神障害者保健福祉手帳を取得できる対象となるのは、統合失調症、うつ病、てんかんなどで、 詳しくはお住まいの都道府県の福祉課などに問い合わせすることで確認できます。 また、精神障害者手帳は障害状況によって1~3級まで等級が分かれ、等級によって控除される 金額が異なります。等級は、障害の状態や程度、日常生活や社会生活のしづらさを総合的に確 認し、基準に沿って判定されます。 参考:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」 https://www.mhlw.go.jp/web/tdoc?dataId=00ta4615&dataType=1&pageNo=1 3.精神障害者保健福祉手帳を取得するメリットとは 精神障害者保健福祉手帳交付のメリットを3つ紹介します。障害者雇用での就職・転職活動ができる 障害者雇用促進法によると、45.5人以上の従業員数を雇っている一般事業主は、従業員数の 2.2%以上、障害者の労働者を雇用しなければならないとされています。 雇用率を達成し、更にそれ以上の雇用数であれば、国から障害者雇用調整金が支給されます。 法律の後押しもあり、企業は障害者雇用を徐々に進めています。また、就労支援型から一般就 労へ移行する方も、年々増えてきています。 この雇用率に算定されるのは、障害者手帳を持っている人のみです。そのため、障害者手帳を 取得していると、就職活動時に、一般採用だけでなく、障害者雇用での募集にも応募できるので 選択肢が広がります。 精神障害の方は、継続的な仕事が困難だったり、就職そのものが難しい場合もあります。障害者雇用として就職した場合、自分の能力と適正に応じた仕事に就ける、通院や治療の配慮や周囲 の理解が得やすいので、無理なく仕事を継続できるなどのメリットもあります。 参照:厚生労働省「障害者雇用促進法の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html等級によって所得税・住民税・自動車税などが軽減される 控除対象配偶者や扶養親族が、精神障害者保健福祉手帳を交付されている場合、所得金額か ら等級に応じて一定の金額の控除を受けられ、所得税や住民税が軽減されます。(納税者も対象 です) 等級が1級の方と同居している場合、配偶者控除・扶養控除に加算があります。控除については 障害者手帳の等級によって金額が変わります。手続きは年末調整か確定申告で行います。相続 税や贈与税でも様々な特例が受けられます。 障害者が所有する自動車の、自動車取得税・自動車税・軽自動車税の減免を受けることもできます。減免内容や、対象となる障害や等級は、自治体によって異なります。(自動車に関しては、 等級1級のみを対象とする自治体が多いです。) 公共料金、公共施設、携帯会社の割引サービスが受けられる 鉄道やバスなど、公共交通機関の割引サービスは身体障害者や知的障害者に限られるケース が多かったのですが、精神障害者も運賃割引の対象とする交通事業者が近年徐々に増えてき ました。 自治体によっては、タクシー利用券の交付やガソリン代の助成をするところもあります。 NHKの放送受信料は、障害や世帯の状況に応じて、割引を受けられるケースがあります。 携帯電話会社の障害者対象になる料金割引サービス。NTTドコモのハーティ割引、auのスマイ ルハート割引、ソフトバンクのハートフレンド割引、各社で内容が異なりますが、基本料金の割引 など大きなメリットがあります。 他にも、美術館や博物館、動物園、水族館など、公共施設の多くで手帳を提示すると入場料割 引が受けられます。是非住んでいる地域で手帳にて割引対象となる施設などを検索する事をお すすめします。 参照: NHK「よくある質問集」「障害を要件とする受信料の免除について知りたいhttps://www.nhk.or.jp/faq-corner/2jushinryou/02/02-02-12.htmlNTTドコモ公式ホームページ「ハーティ割引」 https://www.docomo.ne.jp/charge/hearty/ au公式ホームページ「スマイルハート割引」 https://www.au.com/mobile/charge/charge-discount/smile-heart/ ソフトバンク公式ホームページ「ハートフレンド割引」 https://www.softbank.jp/mobile/priceplan/options/heartfriend-kihon-plan/4.精神障害者保健福祉手帳の等級(1級・2級・3級)の違いと判定基準について 精神障害保健福祉手帳の等級は次のように1~3級まであります。 精神疾患の状態とそれに伴う能力障害の状態の両面から、総合的に判断されます。 1級…精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの 2級…精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加 えることを必要とする程度のもの 3級…精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは 社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの 参考:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4615&dataType=1&pageNo=15.精神障害者保健福祉手帳の申請方法・必要書類について 障害者手帳を申請したからといって、必ず交付されるとは限りません。 自分の障害が精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の交付対象にあたるかどうかを調べ てから手続きをしましょう。 障害者手帳の交付条件は、精神疾患の初診から6ヶ月以上経過している事が条件となります。 自分の初診日を必ず確認してから申請手続きの準備をしましょう。次に申請に必要な書類を揃えます。提出先や相談先は、住んでいる市区町村の障害福祉担当窓口(福祉事務所や福祉担当 課)になります。 申請に必要な4つのもの ①申請書 ②診断書(精神障害者保健福祉手帳用)または障害年金証書の写しなど ③顔写真(タテ4cm×横3cmの場合が多い) ④マイナンバーがわかるもの(個人番号カードか、通知カード+運転免許証やパスポートなどの 身元確認書類) 代理人が申請する場合は、上記4つに加えて以下の2つが必要となります。 ⑤代理権の確認書類(委任状や申請者本人の健康保険証など) ⑥代理人の身元確認書類(個人番号カードや運転免許証) 申請書類の事でわからない場合は、住んでいる市区町村へ事前に確認をしてみて下さい。 取得の流れ 障害者手帳申請取得の流れは以下の通りです。 ①障害福祉担当窓口で「診断書(精神障害者保健福祉手帳用)」の用紙を入手します。 ②精神疾患の診察をしている主治医・専門医に、「診断書」を記入してもらう。 ③市区町村の障害福祉担当窓口に、「申請書」、「診断書」、写真を提出し申請を行います。この 時、必ずマイナンバーも必要になります。 ④申請書類の不備が無ければ審査され、障害等級が決定します。 ⑤審査完了後、およそ1ヶ月~4ヶ月で手帳を受け取れます。 ポイント1 診断書は「初診」から6ヶ月経過しないと作ることができない。 精神障害者手帳の申請には、精神疾患の診察をしている主治医・専門医の診断書が必要なの です。 診断書は、「精神障害に係る初診日から6ヶ月を経過した日以後に作成されたもの」でなければ いけません。 診断書を頂いたら、早めに申請しましょう。なぜなら、医師の診断書の作成日が、手帳の申請日 の3ヶ月以内のもの、などと期限を決めている自治体もあるためです。 ポイント2 交付まで通常でも1ヶ月半ほどかかり、4ヶ月かかることもある。 注意したい点は、手続き期間が意外と長くかかることです。 通常でも、1ヶ月から1ヶ月半かかるとする自治体がほとんどです。 診断書の内容によっては、医師に照会が必要になり日数がかかるほか、障害が手帳の交付に 該当しないと判断された場合や等級認定に専門審査が必要となった場場合など、更に日数がかか ります。その場合3~4ヶ月待たなければならない事もありえます。6.精神障害者保健福祉手帳を申請することのデメリットとは? 手帳を持つことで得られる主なメリットをご紹介しましたが、逆にデメリットはあるのか心配する声 もあります。 表面的なデメリットとしては、主に費用面と手続きの煩雑さがあげられます。 具体的には、医師への診断料がかかること、二年に一度の更新が自己負担といったことが挙げられます。 これらの表面的なデメリットだけでなく、他にも心理的な負荷が考えられます。「手帳を持つ」こと 自体に心理的な抵抗を感じる方も少なくありません。 申請・更新時の物理的負担を感じる方、手帳を保有することによる心理的負担があると思われる方は無理に取得する必要はありません。自分にとって必要だと感じるサービスがあれば、取得を 考えればいいのではないでしょうか。 障害者手帳を持たなくても、受けられる福祉サービスもあります。 例えば、障害年金や、自立支援医療(精神通院)の申請は手帳がなくても可能です。 都道府県、自治体には「心身障害者医療費助成制度」などの名称で、心身に重度の障害がある 方が保険証を使って病院で受診したときの自己負担金の助成が受けられる制度があります。 この制度は、各自治体によって内容が大きく異なりますが、精神障害者も助成対象としている自 治体の場合、精神障害者保健福祉手帳なしで申請できる自治体もあれば、手帳の所持者を対象 とする自治体もあるので、注意しましょう。事前にお住まいの自治体の条件を調べておく事をおすすめします。7.精神障害者保健福祉手帳の更新方法・必要書類について 先述の通り、精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)は、有効期間が2年間と限られており、続けて手帳を必要とする人は、更新申請を必ず行わなければなりません。主治医の診断書も 再度必要となります。有効期限の3ヶ月前から申請ができますから、診断書の手配含め、早めに 準備をしておく必要があります。 申請に必要なもの ①現在お持ちの手帳の写し ②交付申請の時と同じ書類 ③本人の写真 ④印かん 有効期限内においても、精神障害の状態の変化等により、手帳に記載された障害等級以外の等 級に該当すると思われる時は、障害等級の変更申請を行うことができます。主治医の判断後に 障害等級の変更が認められた場合、有効期間は、変更決定の日から2年間(2年後の月末まで) となります。 その際には上記の必要書類と現在交付されている手帳の写しが必要です。 マイナンバーが付与されたことにより、平成28年度から手帳の申請時にマイナンバーに加え下 記が必要となりました。 【通知カード提示の際に必要な本人確認書類】 運転免許証、旅券、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳、療育手帳、在留カードまたは 特別永住者証明書等の本人確認の書類 【上記書類がない場合は以下のうち2点以上の書類を提示】 国民健康保険・健康保険・船員保険・後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証、健康保 険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合若しくは地方公務員共済組合の組合員証、私 立学校教職員共済制度の加入者証、国民年金手帳、児童扶養手当証書又は特別児童扶養手 当証書等 詳しくは、申請先の市町村へお問い合わせ下さい。8.困った時は医療機関、障害福祉課に相談がベスト 精神障害者手帳取得手続きの際に困った際には、医療機関や市区町村の障害福祉課、地域の 精神保健福祉センターなどに相談してみましょう。それぞれの立場から、障害者手帳の取得につ いて的確なアドバイスをして頂けます。 まとめ精神障害があることで、日常生活や社会生活に制約があったり、経済的・精神的な負担を感じて いる方は多いと思います。上記で述べた通り表面的なデメリットは医師への診断料がかかること、二年に一度の更新が自己負担の2つです。 心理的な負荷が大きくない様であれば、メリットの方が多いため、現在手帳をお持ちでない方は 今後取得を考えてみてはいかがでしょうか。 最後に 今回は、精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の申請・取得までの流れとポイントについ てまとめました。申請や手続きに時間はかかると思いますが、手帳によるサービスやサポートを 受ける事で、少なからず負担が軽くなりますので是非取得してみてはいかがでしょうか。 いかがでしたでしょうか? 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