はじめに療育手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された 方に交付される手帳です。療育手帳をお持ちの方は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスや、各自治体や民間 事業者が提供するサービスを受けることが出来ます。具体的には、税金の軽減など生活面や、障害者求人に応募できるなど、就職面で様々なサポートを受ける事ができます。この記事では療育手帳の等級や判定方法、受けられるサービス、メリットとデメリットなどを解説 します。参照:厚生労働省「障害者手帳について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html1.療育手帳とは?療育手帳とは知的障害を持つ方が申請できる障害者手帳です。療育手帳を持つことで障害の証明となり、生活や就職に役立つサービスを数多く受けることがで きます。2.療育手帳の対象者は?発達障害のある方も 取得できる?療育手帳の対象者療育手帳の対象者は、児童相談所又は知的障害者更生相談所から知的障害であると判定され た人に交付されます。18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は知的障害者更生相談所で判定を受けます。療育手帳は、18歳未満で取得する方が多いですが、大人になってから知的障害の診断を受け、 取得する方もいます。発達障害のある方の手帳 知的障害を伴う発達障害を持つ方は、療育手帳発行の対象となる場合があります。もし、療育手帳の対象外の場合でも、精神障害者保健福祉手帳(障害者手帳)の申請対象となり ます。発達障害のある方が取得できる手帳は、知的障害を伴うか否かによって変わってきますので、 申請する前に市区町村の障害福祉課などへ相談してみましょう。発達障害のある方の手帳知的障害を伴う発達障害を持つ方は、療育手帳発行の対象となる場合があります。もし、療育手帳の対象外の場合でも、精神障害者保健福祉手帳(障害者手帳)の申請対象となり ます。発達障害のある方が取得できる手帳は、知的障害を伴うか否かによって変わってきますので、 申請する前に市区町村の障害福祉課などへ相談してみましょう。3.療育手帳の等級と判定方法判定場所・方法療育手帳の対象判定は、知能指数(IQ)と日常生活や社会生活への支障によって判断されま す。判定する場所は、18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は知的障害者更生相談所で行 われます。医師による診察、本人や保護者からの聞き取り、心理検査を用いて判定をします。判定基準として、IQがおおむね70以下(自治体によっては75以下)で、日常生活や社会生活に 支障が出ている場合、療育手帳の交付の対象となる事が多い傾向にあります。各自治体によって判断基準や詳細は異なります。療育手帳の等級 判定の結果により等級が選定され、療育手帳の交付後に受けられるサービスも変わります。基本的に重度(A)とそれ以外(B)に区分されていますが、各自治体によって更に詳細に分かれ る場合もあります。A判定の認定基準について療育手帳のA判定については、厚生労働省から判定基準が示されています。次の①か②に該当する方が認定されます。① 知能指数が概ね35以下であって、次のいずれかに該当する者・食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする。・異食、興奮などの問題行動を有する。② 知能指数が概ね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者 各自治体によって判定基準が違いがあるので、詳細は市区町村の障害福祉課などへお問い合 わせ下さい。参照:厚生労働省「療育手帳制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001224062.pdfB判定(B1、B2)の認定基準について療育手帳のB判定については、「重度(A)のもの以外」と記載されていますが、自治体によっては 「B1」や「B2」などさらに細分化されているケースも多くあります。4.療育手帳を取得するメリットとデメリット療育手帳取得のメリット 療育手帳を取得すると、障害の証明となる事以外にも、色々なサービスを受けられます。就職に関しては、「障害者求人」への応募が可能になる事や、各種福祉サービスを受けることが できます。割引などの福祉サービス療育手帳を取得すると、公共料金の割引や、助成金制度、税金の軽減などを受けられます。主な料金の割引や助成の一部を紹介します。● 医療費の助成● 博物館などの公共施設の割引● 公共機関の割引● 携帯電話基本料金の割引● 公営住宅の優先入居● NHK受信料の免除● 相続税などの減額療育手帳の等級や申請時の所得状況を踏まえて、自治体により受ける事ができるサービスは異 なりますので、詳細は障害福祉課の窓口でご確認下さい。所得税や住民税の障害者控除障害者控除は、納税者本人・配偶者・扶養親族に障害がある場合の所得控除の制度です。中でも、療育手帳の等級がA相当の場合には、「特別障害者」として通常の障害者控除よりも多くの控除を受ける事ができます。障害者控除の額は以下のように厚生労働省により区分されています。● 障害者:所得税27万/住民税26万● 特別障害者:所得税40万/住民税30万● 同居特別障害者:所得税75万/住民税53万障害者控除を受けるには、会社員の方は年末調整で「扶養控除等の申告書」の提出が必要とな ります。個人事業主や年末調整対象外の方は、確定申告の際に提出する必要があるので、事前に税務 署に確認する事を勧めます。参照:国税庁「障害者と税」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/03_2.htm自動車税・軽自動車税及び自動車取得税の控除療育手帳等級がA相当の場合、本人又は本人と生計をともにする方が所有する車で、控除を受 けられる場合があります。自動車税・軽自動車税及び自動車取得税の控除に関しては、必ず控除になるとは限らないの で、詳しくは自治体に相談してみて下さい。参照:愛知県「自動車税種別割Q&A 6」(2024/4/9) https://www.pref.aichi.jp/soshiki/zeimu/0000037573.html療育手帳を持つデメリットはある?強いて言えば、手帳の申請や、更新手続き費用が掛かる事が、デメリットと言えるかもしれません。書類や写真などを自分で準備する必要があり、交付される迄に最低1~2ヶ月かかる場合が ほとんどですので、余裕をもって早めに手続きしましょう。人によっては「障害を認めること」を心理的負担に感じる人もいるようです。とはいえ、手帳は必ず取得しなければいけないということはありませんし、取得しても必要がなく なったら手帳を返納することもできます。取得する場合のメリットと照らし合わせて、必要かどうか を判断するのがよいでしょう。 5.就職で活用できるサービス療育手帳を所持すると、仕事に関する支援やサービスを受けられます。障害者求人へ応募できる障害者求人とは、障害者手帳を持つ方が応募できる求人の事です。障害を持つ方が、障害に応じて働きやすい環境の下で、労働ができる配慮が受けやすくなります。企業は従業員数に応じて、一定の人数の障害のある方を雇う義務があります。(45.5人に1人の 割合)公共職業安定所(ハローワーク)ハローワークでは、障害者求人を調べることができ、障害者用窓口も設けており、職員と相談し ながら求人の選択や面接の設定・応募を行えます。地域障害者職業センター就職に向けた訓練や、講習を受けることができ、リハビリテーション計画の作成、職業適性検査 など働くための支援が受けられます。6.障害福祉サービス障害福祉サービスとは、障害を持つ方が日常生活や社会生活を営むために、必要な訓練などを提供するサービスのことです。ここでは仕事に関係するサービスを紹介します。就労継続支援A型雇用型と呼ばれ、原則的に利用者は事業所と個人的に雇用契約を結びます。そのため、労働基準法や最低賃金が適用され給料が発生し支払われます。その中で働く機会の提供や一般企業への就職へ向けた支援を行っていきます。就労継続支援B型非雇用型と呼ばれ、利用者は事業所と雇用契約は結びません。給料の代わりに、作業に応じた「工賃」が支払われます。就労継続支援B型では、就労移行支援や就労継続支援A型への移行や、一般企業への就労に 向けた訓練を行います。就労移行支援一般企業に就職を目指す障害を持つ方が、事業所に通いながらプログラムや実習を行います。専門のスタッフと働きながら、スキル取得に取り組む事や面接練習の支援を受けられます。就労定着支援生活介護・自立訓練・就労系福祉サービスを利用して就職した方が利用できる支援で、働いた後 に企業や利用者との定期面談や業務の調整などを、間に入って行うことで、長期的に働く事を目 的としたサポートをする制度です。7.療育手帳の申請方法と更新時期療育手帳の申請方法市区町村の障害福祉課の窓口で申請書を入手します。窓口へ直接出向いて取得する方法や、市区町村のサイトから入手できます。記載した後は同じ窓口へ、その他の必要書類を添えて提出し、判定を受けるための予約を必ず取ります。療育手帳の申請の流れは下記の通りになります。①窓口へ申請書を提出します。②申請書を基に判定を受けます。③判定を受け問題がなければ交付されます。申請の際に必要となる書類は下記になります。● 申請書● マイナンバーカード等の身分証明書● ご本人の写真● 印鑑● 母子手帳● 診察情報提供書 など18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は知的障害者更生相談所で判定を受けることがで きます。18歳以上で判定を受ける場合は、18歳未満の際に知的障害のあったかどうか、確認が行われ ます。確認として、学生の頃の記録や家族や周りの方からの証言が必要となるので、申請手続き前に 準備しておく必要があります。判定後、申請が認められると、通常1~2ヶ月ほどで療育手帳が交付されます。療育手帳の更新について 療育手帳は期限があるものとないものがあります。手帳に「次の判定月日」などの期限が記載がある場合、更新手続きをする必要があります。更新は期限の3か月前より受け付ける自治体が多く、手続き時に更新申請書、現在の療育手 帳、写真などが必要となります。18歳未満の場合は、2年ごとに更新などの場合があります。自治体によって違いがあるので、詳 細は各自治体にご確認下さい。参照:島根県「よくある質問(Q&A)療育手帳」 https://www.pref.shimane.lg.jp/medical/fukushi/syougai/chiteki_shougaisha/situmon.html療育手帳の更新以外にも手続きが必要な場合 療育手帳は更新以外にも、以下のような場合に市区町村の窓口で手続きが必要です。● 療育手帳を破損・紛失した場合● 本人または保護者の住所・氏名が変更になった場合● 療育手帳を返納したい場合以上に該当する場合は、早急に手続きを行いましょう。まとめ療育手帳は取得後、障害の証明以外に、生活面・経済面・仕事面で数多くの役立つサービスを 受ける事ができます。上手に活用していく事で色々な場面での自己負担を軽減する事ができるため、取得を検討して みてはいかがでしょうか。最後にこの記事では、療育手帳の等級や判定方法、受けられるサービス、メリットとデメリットなどを解説しました。就職(障害者雇用)や公共料金の割引制度など、メリットも多いことがわかると思います。よくわからず、まだ取得していないという方にとって、メリットデメリットを検討する機会になれば幸いです。いかがでしたでしょうか?こんな記事が読みたい!といったリクエストがあれば、ぜひお問合せからご要望お待ちしています。