Summary北欧デンマークと言えば、高福祉国家をイメージする人が多いでしょう。国民は高い税金を納める代わりに、手厚い福祉を受けている印象です。では、障害者に対してのサポートはどうなのでしょうか。今回はデンマークの障害者就労施策「フレックス・ジョブ」について紹介します。フレックス・ジョブは障害者の自立を保証するサポートというより、「良き人生を送る」ための一手段、社会参加への仕組みづくりと言えます。1.フレックス・ジョブは公的支援付きの就業形態デンマークの「フレックス・ジョブ」は、障害者が公的支援を受けられる就業形態です。デンマークでは週37時間労働がフルタイムの基本であり、30時間以下の労働はパートタイム扱いとなります。フレックス・ジョブ制度とは、障害を理由にパートタイムでしか働けない場合でも、フルタイムの賃金との差額が賃金補助として自治体から支払われる仕組みです。つまり、フレックス・ジョブ制度を利用する障害者はパートタイム勤務でも、補助金が出るので、フルタイム労働をする健常者と同等の報酬を得られます。フレックス・ジョブは、デンマークでいかに障害者への雇用機会が設けられているかがわかる制度と言えます。2.デンマーク障害者就労促進政策の方針フレックス・ジョブ制度が生まれた背景には、デンマークにおける障害者の自立概念が影響しています。デンマークでは、「障害者」に対する公的な定義付けがされていません。個人の抱える障害が、生きていく上で妨げとなった場合に生じるハンディキャップを、デンマークでは障害とみなしています。サポートによって、機会均等を保障する事がデンマークにおいての障害者施策方針です。デンマークの障害者概念に基づく政策はとても整っており、以下の3つのポイントがあります。機会均等機会均等に基づき、障害者が一般市民と同等に、労働市場への参加できるような政策を促進する。補償障害の為に経済的負担がないように、公的部門(自治体)が補償する。部門責任政府機関の社会省や、労働・建築省などに対して、障害者対策に関する対策と財政的な責任を持たせる「部門責任」を課す。3.障害者の就労促進政策の主な制度職業リハビリ訓練地域の公立リハビリ訓練所や一般企業、公的機関で実習や訓練を受け、就労能力が評価されます。職業リハビリ訓練は、5年間まで受けることが可能であり、訓練中は月額約30万円のリハビリ手当が支給されます。賃金の補助金支給制度その1「賃金の補助金支給制度」については2種類あります。1つ目は障害者年金受給者への支援制度です。デンマークでは障害者でも多少の労働能力があり、将来的に労働が可能であると判断された場合は就業促進支援の対象となります。障害の程度によって、恒久的に労働能力が欠如していると判断される人は、障害者年金を受給します。障害者年金受給者でも就労を障害者には、最低賃金の5分の1程度を補助金として自治体が雇用主に支給する制度があります。障害者の賃金は、障害者と雇用主の間で交渉して決められ、障害者は障害者年金と賃金の両方を受け取れますが、年間収入が一定額を超えた場合は障害者年金支給額が調整されたり、年金支給が全て差し止めになります。賃金の補助金支給制度その2もう1つは「フレックス・ジョブ」です。フレックス・ジョブは、賃金の一部を自治体が負担することによって、障害者が一般企業や公共機関で就労できる制度です。ただし、障害者年金受給を受けている人は適用されません。この場合、障害者年金の受給を一時的に据え置きすることで利用可能となります。4.柔軟な労働市場の形成に役立つフレックスジョブの事例最後に、デンマーク第三の都市であるオーデンセ市のフレックス・ジョブの事例をご紹介します。市が直接の雇用主となり「ミニフレックス・ジョブ」を実施し、最も就労に課題がある人に対しては、直接雇用による就労機会の提供もしてます。ミニフレックス・ジョブとは、週10時間以内の労働でもフレックス・ジョブ制度が利用できる後にできた制度です。ミニフレックスの場合は短期利用が前提で、数年後に10時間以上の労働可能な人が対象です。フレックス・ジョブとミニフレックス・ジョブを組み合わせ、障害者個人の能力に応じた労働時間や、賃金の組み合わせが可能です。短時間勤務を望む雇用主とのマッチングにも繋がります。障害者の就労可能性を広げることに成功しており、フレックス・ジョブは柔軟な労働市場の形成に有効性を持つ事が実証されていると言えるでしょう。今回の記事のまとめデンマークでは、フレックス・ジョブやミニフレックス・ジョブを活用して、障害者の安定した雇用や活躍できる可能性を広げる事に成功しております。また、短時間しか働けない障害者と、雇用主とのマッチングにおいて、とても最適な制度だと感じます。最後に日本でも働き方改革と言われておりますが、まだまだ障害者の雇用に関しては、他の国に比べ遅れている現実があります。今回取り上げたデンマークのような仕組みを早く取り上げて、実施して頂きたいと思います。いかがでしたでしょうか?こんな記事が読みたい!といったリクエストがあれば ぜひお問合せからご要望お待ちしています。