Summary「福祉が進んでいる」イメージが強いフィンランドですが、現在フィンランドでも高齢化が進み、社会保障費が圧迫している中で、福祉の効率化などを検討する流れが急務です。フィンランドには、障害者手帳や受給者証はありません。どのように高福祉サービスが提供されているのか疑問に感じると思いますが、日本との教育・福祉の違いを解説していきます。1.フィンランドの福祉における3つの特徴、鍵は「主体性」①自分自身でサービスを受けるかどうか判断する「主観的サービス」フィンランドは、「主観的サービス」と言われる福祉サービスが特徴です。日本の場合、障害者手帳や受給者証がなければ適切な福祉サービスを受けられません。また、障害者手帳が出るか分からない、認定までに時間がかかり、いつ認定されるか分からないという悩みも存在します。今の日本は、客観的証明物が必要となる為「客観的サービス」と呼ばれています。フィンランドは、障害者手帳や受給者証がありません。障害者本人が主観的に自らの障害のニーズに応じて、どんなサービスが必要かを捉え、生活する上で必要な支援を受けたいと申し出れば、支援を受けることが可能なのです。フィンランドは、人権の尊重という概念が根付いており、第三者が判断するのではなく、自分自身が受けるかどうかを主体的に決められるのが、フィンランドの特徴の一つです。人それぞれ感じる不自由さの中でも、人権が享受されるように、国は本人の視点に立ってサービスを提供していく必要があるという考え方があります。②アシスタントを雇用する「PA(パーソナルアシスタンス)」次に挙げられる特徴が「PA(パーソナルアシスタンス)」と呼ばれる職業です。国でPA(パーソナルアシスタンス)費用をサポートする仕組みになっており、自分にあったサービスを個別具体的に相談できるようになっています。サービスを必要とする方が、自らのアシスタントを雇用し、生活における障害をなくす為に、サポートを受けることができる制度です。PA(パーソナルアシスタンス)は障害者個人と契約を結び、障害者自身が社長となりアシスタントを雇用します。日本みたいに、あの事業所は自分に合わない。でも、通える範囲にはあの事業所しかないから通わざるを得ない…というような悩みも発生しません。フィンランドの人口は約540万人ですが、そのうち約2万人程度がPA(パーソナルアシスタンス)として働いています。それだけ選択肢が多く、個人同士の契約なので自由度の幅が広いのが特徴に挙げられます。サービスを受ける側も雇用主として評価される場合もあり、一定の主体性が必要です。ただし、雇用管理業務も雇用主の障害者側が行うため、最初に雇用契約するに至るまで、時間は掛かります。(日本でも障害者手帳や受給者証の手続きで時間は掛かります。)フィンランド以外でもデンマーク・スウェーデン・ノルウェーなど北欧の国でPAの仕組みは取り入れられています。③サービスを受けてきた当事者が、専門家として活躍3つ目の特徴は、「当事者専門家」が圧倒的に多いということです。「日本では官僚など福祉の仕組みを考えたり、意思決定をしたりする機関に、障害当事者の方が参加するケースは稀なのが現状です。フィンランドでは、障害当事者の方が多く参加しております。サービスを受けてきた側としての経験を、今度はサービスを提供する側として活用していく姿勢、次世代に繋いでいく循環がうまく整っており、フィンランドの高福祉が実現できたのだと思います。2.フィンランドも学んだ「日本の障害者就労支援」フィンランドが、福祉国家と呼ばれる3つの特徴を紹介しましたが、日本がそのまま取り入れる事が福祉施策にとって最善とは限りません。フィンランドの高福祉を支える背景には、24%の高い税率やカジノなどによる財源があります。ただし、フィンランドも日本と同じく高齢化が進んでおり、今の財源のままでは、5年後にはEUにいられなくなるくらい国の借金が多くなっております。現在、財政を立て直す改革が進んでおり、福祉サービスを簡素化・効率化していくかという課題を解決する時期に来ており、改善を進めていく方向にあります。フィンランド首相が、日本の障害者就労支援は非常に進んでいるという事で、わざわざ視察に訪れました。今の日本では、フィンランドと比べて「当事者専門家」が圧倒的に少ないですが、障害者就労支援の面では、フィンランドが日本から学ぶことも多いという現実があります。日本でも、今後障害者の活躍できる場所が広がれば、「当事者専門家」も増えていく可能性も出てくると思います。3.仕事に誇りを持つことが、業界をより良くする第一歩へ日本とフィンランドの「教育・福祉分野で働く人々の職業観の違い」があります。「日本では福祉分野の仕事に対して、大変そうというイメージが根強くあると思います。フィンランドでは、学校の教員や福祉分野で働く人たちが、自分の仕事に対して非常に高い自尊心を持っており、ずっとこの領域で働きたいと答える人がとても多いのです。理由として、教員になる為には、必ず大学院を卒業し、職就までのフローが一定以上整備され、職業としてのステータスがとても高いことが挙げられます。自分が受けてきたサービスを、次世代により良い形で繋いでいきたいという当事者意識や、対人支援の仕事が本来的に大切にされている事が挙げられます。フィンランドの福祉は、『なぜ自分がここで働くのか』『なぜこういう仕事がしたいのか』という落とし込みを深く追求し、教育・福祉の分野で働いている人が多いと言う筝が分かる一面でもあります。今後の日本でも、『福祉や教育の仕事を自分がやりたい』『人の役に立つところを最大限担っていきたい』と、一人ひとりが思える事が、日本の福祉や教育を今後良くして行く事に繋がると思います。4.日本の福祉のこれからフィンランドと比較して、日本の教育・福祉施策はこれからどうなっていくのでしょうか。大切なのは何かを学び、それぞれの国にあった実情や状況に応じて方法を考えていく必要があると感じます。そして、教育・福祉領域に関わる一人ひとりの意識や姿勢が、今より前向きになっていく事、また働くことに誇りや自信を持ち続け、自分の仕事を好きになっていく事が、これからの日本の教育や福祉がより一層良くなる事をに繋がっていくと思います。今回の記事のまとめ福祉国家と呼ばれるフィンランドの実情を解説しましたが、3つの特徴に共通しているのは、障害者自身が主体性を持ってサービスを選ぶことができる仕組みづくりにあります。しかし、現状を維持する事は財政的に非常に困難な直面に達しており、これから大きな転換を迎える可能性もあります。最後に日本の就労支援制度について、フィンランド以外の国々でも参考にする国が数々あります。日本の現在の取り組みは評価されている一方、改善点も非常に多いことも問題点の一つだと思います。特に福祉現場における慢性的な人手不足、障害者の活躍できる場所、賃金面での改善が必要であると感じます。より良い環境の為には、ほかの国の良い所はどんどん取り入れて改善していき、障害者も働き手も、もっと過ごしやすい環境づくりが必要だと思います。いかがでしたでしょうか? こんな記事が読みたい!といったリクエストがあれば ぜひお問合せからご要望お待ちしています。