Summary就労定着支援を開業する際に必要な項目をまとめました。どのような手順で開業できるのかという疑問もこの記事を読んで頂ければ参考になるかと思います。指定基準、指定申請ができる事業者、サービス内容、開業までのステップ、気になる報酬の仕組みを解説します。1.就労定着支援とは?就労定着支援とは、障害のある方が就職後、企業で長く働き続ける為の、仕事や生活に関するフォローする障害福祉サービスです。就労定着支援事業の指定を受けられる主体就労定着支援事業は、就職後、就職前に利用していた事業所の支援を、継続的に受ける事ができます。なので、就労移行支援事業所などと一体として運営できます。就労定着支援事業の指定を受ける為には、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、自立訓練、生活介護事業所を運営する項目に該当する指定障害福祉サービス事業者に限られます。過去3年間に平均一人以上新たに就職した利用者がいる事業所または、事業運営が3年未満の場合、就職した人が3人以上いる事が条件になります。指定を受けた後に毎年満たす必要はありません。ただし、次の指定更新の際には更新の要件として求められます。対象者について就労定着支援を利用できるのは、就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型・自立訓練・生活介護等のサービスを利用し企業に就職して、就労継続期間が6か月を超えた人です。また、「復職支援(リワーク)」としてサービスを利用した人も、復職後6か月を経過した場合、定着支援事業の対象となります。サービス概要と目的就労定着支援事業所は、利用者と月1回以上の面談及び、月1回以上は職場での状況を確認する必要があります。就労定着支援の最終目的は、利用者が自分の力で職場での課題に対応できるようになる事です。最終目的を目指して面談や職場訪問、雇用先企業の上長や人事担当者、障害福祉サービス事業者、医療機関と連携して支援を行う必要があります。また就労に伴う生活リズムや体調の管理、生活面の課題もサポートします。支援期間就職後最初の6か月間の定着支援は、原則、就職までに利用していた就労移行支援や就労継続支援事業所が実施します。その後最大3年間が、就労定着支援事業によるサポート期間となります。3年間の就労定着支援期間が終了した後、引き続き支援が必要な場合、就労定着支援事業所がそのまま支援継続可能です。また地域の支援機関が支援を引き継ぐケースもあります。就労定着支援期間が過ぎた方への支援は基本報酬の対象になりません。就職後3年半以上6年半未満の就労定着の結果は、就労定着実績体制加算で評価されます。開業には行政の指定が必要就労定着支援を含む障害福祉サービスを開業をするには、人員や設備、運営に関する基準基準を満たしたうえで指定権者(※)に申請し、就労定着支援事業としての指定を受ける必要があります。※ 指定権者とは→障害福祉サービスの指定権限をもつ都道府県、政令指定都市、中核市などの自治体を指します。2.就労定着支援のサービス内容就労定着支援の役割利用者によって、働く環境の中で障害特性による様々な困惑や問題が生じる可能性があります。就労定着支援でサポートする課題には、長期的に働いているからこそ生じるものも含まれます。就労定着支援の役割は、課題を把握した上で必要な支援を提供する事が求められます。就労定着支援の支援内容月1回以上の面談を実施する義務があります。面談で状況を確認し、悩みや課題を把握します。悩みや課題は、就労定着支援員が本人に代わって解決しようとしてはいけません。利用者本人と職場が自分たちで解決するスキルを習得できるようにする事が重要です。面談の方法として、双方向コミュニケーションがアルタイムに確認できる事、利用者の外形的な状態が確認できる事が求められるので、対面又はオンラインでの面談が望ましいです。利用者を雇用する企業に、月1回以上の訪問をし、利用者の職場状況を把握するよう努めます。特段の事情がない限り、原則として訪問し、利用者との面談を同日に実施することも可能です。支援内容の報告義務就労定着支援を行った後、利用者に対し、支援内容や関係機関との連携情報をまとめた報告書を月1回以上必ず提供します。また、利用者本人の同意を得た上で、就職先の企業や家族、関係機関にも共有し、より良いサポート体制を築きます。共有の際には、利用者にしっかりと説明しプライバシーに配慮しましょう。なお、支援報告書の提供は、就労定着支援サービス費の基本報酬の算定要件ですので、未提供の場合は報酬が算定できないので注意が必要です。3.就労定着支援事業の売上と経費就労定着支援事業の売上と経費は、次に挙げる要素で構成されております。売上…障害福祉サービス等報酬(基本報酬、加算、減算)就労定着支援事業の売上就労定着支援事業の売上は「障害福祉サービス等報酬」を指します。障害福祉サービスを提供した事業所に対し、市町村が国民健康保険団体連合会(国保連)を介して支払う報酬です。報酬にはベースとなる「基本報酬」と、一定の条件を満たした際に基本報酬とは別に支払われる「加算」があります。一方、基準を満たさない場合、基本報酬が減額され、これを「減算」といいます。基本報酬と算定要件就労定着支援の基本報酬は、前年度の月の平均利用者数により、3つの区分に分かれます。それぞれの区分は直近3ヶ年度(前年度末から数えて過去3年間)の就労定着率によって、さらに7段階に分かれます。なお、開業して間もない事業所は、計算に必要な期間の実績が存在しないので、代わりの値を用います。● 就労定着支援の基本報酬一覧前年度の月の平均利用者数直近3ヶ年の就労定着率単位数20人以下95%以上3449単位/月90%以上-95%未満3285単位/月80%以上-90%未満2710単位/月70%以上-80%未満2176単位/月50%以上-70%未満1642単位/月30%以上-50%未満1395単位/月30%未満1046単位/月21人以上40人以下95%以上2759単位/月90%以上-95%未満2628単位/月80%以上-90%未満2168単位/月70%以上-80%未満1741単位/月50%以上-70%未満1314単位/月30%以上-50%未満1117単位/月30%未満837単位/月41人以上95%以上2587単位/月90%以上-95%未満2463単位/月80%以上-90%未満2032単位/月70%以上-80%未満1632単位/月50%以上-70%未満1232単位/月30%以上-50%未満1047単位/月30%未満785単位/月報告書(支援レポート)が基本報酬の算定要件月1回以上の面談と、支援方法をまとめた報告書を、本人や関係者で月1回共有する事が算定要件です。報酬の計算方法報酬は金額ではなく単位数で表され、1単位の単価をかけて金額を算出します。障害福祉サービス各事業の単価は、地域ごとにの8段階「1級地〜その他」で定められております。報酬の総額は、下記の計算式にて算出します。算定する単位表×地域ごとの1単位あたりの単価×1ヶ月の利用人数=報酬の総額就労定着支援事業の基本報酬は、1ヶ月単位で設定されています。利用者1人あたりの1か月の基本報酬はサービス提供回数に関わらず固定です*。*延べ利用回数ではない点に注意しましょう。加算や減算について一定の条件を満たすと、基本報酬に適応される加算は、下記になります。職場適応援助者養成研修修了者配置体制加算、定着支援連携促進加算、就労定着実績体制加算など、利用者の研修や定着によって加算されます。また適用される減算は以下の通りです。サービス管理責任者欠如減算、サービス提供職員欠如減算、個別支援計画未作成減算が挙げられます。人員欠如や計画書を発行しないと減算対象になるので注意しましょう。利用者の負担金前年の世帯収入状況に応じて、利用料が発生する利用者もいます。就労定着支援の利用者は、収入が発生しているので、利用料の自己負担が発生する可能性が就労移行支援よりも高くなります。就労定着支援事業の経費就労定着支援事業所の経費は、職員の人件費と地代家賃が中心となり、そこに水道光熱費や消耗品費など、その他の経費が加わります。固定費が中心となる為、予算策定は比較的単純です。4.就労定着支援事業の開業に向けた準備就労定着支援事業の申請準備就労定着支援事業を開業する為には、指定権者に申請を行う必要があります。申請時は、人員配置基準や設備基準を満たした上で、必要書類を揃えて提出します。指定権者によっては、各種基準にその地域独自のルールがある場合や、必要書類が異なる場合がありますので、必ず事前確認しておきましょう。申請後の見据えた準備指定権者が事業所に訪問し、基準通り適正に運営確認するのが実地指導です。人員や設備、支援、報酬の請求、会計など広範囲にわたり確認します。また、記録や書類の各種資料や事業所内の状況のチェック、職員へのヒアリングなどが実施されます。運営に関する助言、不備に対する口頭や文書での指導のほか、不備が重大な場合は「監査」行われる事もあります。実地指導は、新たに開業指定を受けてから1年以内、その後は、3年に1度実施されます。日頃から人員・設備・運営基準や法令の遵守を徹底しておく必要があります。5.就労定着支援事業の開業ステップ就労定着支援事業の申請準備新たに就労定着支援事業所を開業するには、様々な準備や手続きがあります。特に申請のタイミングや順序などを把握し、入念に準備しましょう。事業準備指定基準や事業の仕組み、地域の障害のある方への理解を進め事業計画を立てます。事業所の方針を決め、収益を考える事が大切です。指定申請の流れや準備する物には、指定権者ごとのルールもあるので、まずは指定権者から情報を集めて、必要な手続きや提出物について申請窓口に相談しましょう。申請準備開業への最大のステップが指定申請です。申請に必要な「指定基準」を満たす為の準備をします。人員配置基準就労定着支援事業に必要な人員は以下の通りになります。ただし、就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自立訓練と同じ事業所で一体的に就労定着支援を運営する場合は、 利用者の合計数に対する配置すれば問題ありません。管理者1人(他の職種と兼務可能)サービス管理者利用者60人以下の場合1人以上利用者61人以上の場合1人以上利用者40人増えるごとに1人1人以上は必ず常勤が義務就労定着支援員利用者40人に対して常勤換算で1人(特別な資格は不要です)一体的に運営するサービスのどちらも利用者数が多い場合には、特にサービス管理責任者の追加配置が必要になります。平均利用者の合計数を常に確認し、サービス管理責任者が不足する事態を防ぎましょう。設備基準設備基準は以下の通りです。要件備考事業を行う為に必要な広さ既存事務所の一区画を活用できることが多い事業に必要な設備や備品既存事務所との共用が認められる可能性があるただし、就労移行支援事業所など一体で運営する場合も、細かい部分は地域独自のルールや指定権者ごとに違いがあるため事前に確認しましょう。6.運営準備サービス提供開始に向けて、指定申請の準備と並行できるものは、早めに取り掛かり、円滑に準備を進める必要があります。業務の効率化の重要性就労定着支援を開業する場合は、業務の効率化が非常に重要です。既存の就労移行支援事業所が、新たに就労定着支援を追加して開業する場合、業務量や業務時間の具体的なシミュレーションした上で、支援の質や提供時間を円滑に行っていける仕組みづくりが必要です。業務の効率化の見直しも合わせて行いましょう。指定申請の流れ人員や設備の規定や基準を満たした上で、開業する地域の指定権者に必要書類を提出し、正式に申請となります。受付窓口や各種要件などの詳細については、必ず事前に指定権者に確認して全体の流れを把握し、人員確保や設備の整備の計画を立てる必要があります。就労定着支援開業にあたっての相談先● 行政(指定申請に関する相談)指定権者は都道府県、政令指定都市、中核市です。開業する地域を決めたら指定権者の情報と障害福祉サービスの指定申請窓口を確認し、早めに相談しましょう。● 行政書士(申請手続き、申請の相談)依頼の際には、障害福祉サービスの開業に詳しい行政書士を探しましょう。今回の記事のまとめ就労定着支援事業を開業をする際に、基準や関係法令、現場業務についてもしっかりと検討することが大切です。利用者へ、より質の高い支援を提供し、利用者を長期的にサポートできる運営体制の構築や最適化を行っていく事が大切です。最後に利用者が自分に合う仕事を見つけ、職場に定着して長く働き続けるために、長期的なサポートを行っていくことが就労定着支援です。利用者の職場定着で、利用者本人の人生が豊かになり、職場での活躍や結果としての離職率低下は、障害のある人の労働市場全体の活性化にも繋がります。いかがでしたでしょうか?こんな記事が読みたい!といったリクエストがあればぜひお問合せからご要望お待ちしています。